法令の素顔をゆるりと愉しむブログ、
「おきてのみやげ」の深夜不定期便を
お届けいたします。
ナビゲーターを務めます、
テラボ(terrabo)です。
たとえ、門外漢(amateur)でも、
たやすく読めるはずの法律の条文を、
まさしく読めるようにしようとするのが、
このブログの密かな使命(mission)です。
堅物(かたぶつ)でしかめっ面の条文には、
『北風と太陽』の二回戦目のように、
ゆるりとした心構えで取り組むのが得策
なときもあります。
そこで今宵は、
「んっ、衆法・参法・閣法は生い立ち?」
のトピックで、悠長に
くつろぎましょう。

あわただしい学舎から戻り、
暮れ時の倦怠感をシャワーで流してから…
それでは、幕を上げましょう。
Table of Contents
1 どのような視点からの分類か
一見して、タイトルの「衆法」、「参法」及び「閣法」という、
文字通りの言葉がピント来ないとすれば、
それは、中分類だからかも知れません。
いうまでもなく、憲法では、
「国の唯一の立法機関である。」(第41条)と定められ、
法律案は国会で審議されて、両議院で可決すれば、
法律として成立します。
しかし、その法律案の生い立ち、つまり、
誰によって、企画・立案され、国会へ提出されるか…
は別問題ですよね。
それでは次に、立法過程の旅に出かけましょう。
2 立法過程上の分類
実は、国会で審議される法律案は、大別して、
「国会議員が国会に提出(発議)する場合」と
「内閣が国会に提出する場合」
の2つがあります。
一般的に、
前者のケースを、「議員立法」
後者のケースを、「政府立法(内閣立法)」
と言います。
これが、立法過程の大分類ですね。
そして、国会議員には、衆議院議員と参議院議員がいるので、
「衆議院議員が発議(提出)する法律案」を「衆法」、
「参議院議員が発議(提出)する法律案」を「参法」、
「内閣が提出する法律案(内閣提出法律案)」を「閣法」
と呼びます。
これが、立法過程の中分類です。
なお、各委員会(調査会)も法律案を提出することができますし、
その場合、委員長(調査会長)をもって提出者となります。
各委員会(調査会)が提出する法律案は、おおむね、
各会派が賛成し、成立しやすいと考えられます。
いったん立法の流れや仕組みが分かると、
「衆法」、「参法」及び「閣法」って、
字面どおりの業界用語なので、一目瞭然ですね。
法律に係る立法過程を記述する際には、琥珀色で、例えば、
「衆法(〇〇委員長)として、」
「閣法として、」
などと、文中に盛り込めば足ります。
3 使ってなんぼのブログです
それでは、間髪置かずに使ってみましょう。
ここで、【第4回】で習得した「施行」などを加えますと、
ほどほど面倒っちいので、「立法過程」のみを付け足して、
題名が改正されるようなハイライトシーンを描いてみましょう。
既に、【Exercise1】と【Exercise2】で取り上げました、
障害者保健福祉施策に係る法律を主な題材にします。
ご都合主義と言われようが、気にしない、気にしない…
(1) 障害者総合支援法
始まりは、平成17年10月31日、閣法として、
「障害者自立支援法」(平成17年法律第123号)
が成立しました。
⇓
その後、平成24年6月20日、閣法として、
「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」(平成24年法律第51号)
が成立し、同法第1条により、
「障害者自立支援法の一部改正」
が行われ、題名が、
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号)
となりました。
(2) 身障者福祉法
昭和24年12月3日、衆法として、
「身体障害者福祉法」(昭和24年法律第283号)
が成立しました。
(3) 精神保健福祉法
昭和25年4月15日、参法として、
「精神衛生法」(昭和25年法律第123号)
が成立しました。
⇓
その後、昭和62年9月18日、閣法として、
「精神衛生法等の一部を改正する法律」(昭和62年法律第98号)
が成立し、同法第1条により、題名が、
「精神保健法」(昭和25年法律第123号)
となりました。
⇓
さらに、平成7年5月12日、閣法として、
「精神保健法の一部を改正する法律」(平成7年法律第94号)
が成立し、題名が、
「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」
(昭和25年法律第123号)
となりました。
(4) 知福法
昭和35年3月31日、閣法として、
「精神薄弱者福祉法」(昭和35年法律第37号)
が成立しました。
⇓
その後、平成10年9月18日、参法(国民福祉委員長)として、
「精神薄弱の用語の整理のための関係法律の一部を改正する法律」(平成10年法律第110号)
が成立し、同法第6条により、
「精神薄弱者福祉法の一部改正」
が行われ、題名が、
「知的障害者福祉法」(昭和35年法律第37号)
となりました。
4 業界用語は手っ取り早い
以上のように、それぞれの立法過程を見比べると、
- 閣法のみにより、誕生し(制定され)、成長す(改正され)る
ような、モノトーンな法律もあれば、 - 衆法(又は参法)として誕生し、閣法として成長するような、
つづら折りの法律もあります。
業界用語を付け加えるだけで、
それぞれの法律の成り(生い)立ちを、
履歴書に目を通すように伺い知ることができます。
なんと便利なことでしょう!(ビフォーアフター風)
一手駒を進めたところで
今宵は、これで幕切れです。
それでは、近いうちに
お会いしましょう。
