たとえ、門外漢(amateur)でも、
たやすく読めるはずの法律の条文を、
まさしく読めるようにしようとするのが、
このブログの密かな使命(mission)です。
堅物(かたぶつ)でしかめっ面の条文には、
『北風と太陽』の二回戦目のように、
ゆるりとした心構えで取り組むのが得策
なときもあります。
今宵は、
「法案ミス?」のトピックで、
心地よく過ごしましょう。

雑踏の構内から戻って、
6限過ぎの倦怠感をシャワーで流してから…
それでは、幕開けです。
Table of Contents
1 メディアの取材から
今次は、これまでと趣(おもむ)き異にして、
メディアに掲載されている記事の中で、
法令の素顔に触れている部分をご紹介します。
取り上げる記事当時の状況は、
第204回常会(通常国会)において、
令和2年度末(3月下旬)時点で、
閣法(内閣提出法律案)及び条約案(承認を求めるの件)
を提出した全16府省庁61法案11条約のうち、
13府省庁23法案1条約で表記上の誤記があった
(閣法の4割弱)とのことです。
当該記事の全体の論調は、
そうした法案ミスが起きる原因や背景を探る
という主旨と思われますが、
本ブログは、法令の素顔を愉しむものなので、
記者さんが、法令に携わる関係者から事実関係
を取材したと思われる、
閣法に関わる「5点セット」等の資料を中心に
取り上げたいと思います。
2 閣法をめぐる事実関係
それでは、さっそく実際の記事に移りましょう。
以下の文章は、SankeiBiz が、
2021.3.24 06:02に配信した記事
「相次ぐ法案ミス、官僚の激務も影響?
政治と官僚の関係変化が背景か」
の一部抜粋です。
随所のゴシック体表記や略記(…)、注記、
行間詰めなどは、筆者が後付けしました。
また、「5点セット」等の資料を中心にリンクを貼り、
それぞれの実物がイメージしやすいように工夫しました。
それでは、長らくお待たせしました。
配信記事のはじまり、はじまり~
「今国会で政府提出法案などに誤記などのミスが相次ぎ、
野党が国会軽視などと批判を強めている。…
発端となったデジタル改革関連法案(注1)をめぐっては、
参考資料に誤記など45カ所の誤りがあった。
政府は10日の衆院内閣委員会理事会に正誤表を
提出したが、そこにもミスが判明した。
平井卓也デジタル改革担当相は
12日の衆院内閣委員会で、再発防止チームを設置し、
今月中に改善策をまとめる方針を示した。
『大部にわたる法案(注2)を若い職員だけで読み合わせするには
何十時間もかかる』
平井氏は同委で、関連法案が
60を超える法案をまとめた「束ね法案」(注3)
であることを踏まえ、法案を担当する
内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室(注4)に
相当の負荷がかかっていたと強調した。…
法案は
(1)案文
(2)理由
(3)要綱
(4)新旧対照表
(5)参照条文
で構成され、通称「5点セット」と呼ばれる。
このうち要綱、新旧対照表と参照条文は
参考資料として添付される。
法案の核である案文は、どの省庁でも読み合わせを重ね、
誤記を見つけるチェックソフトなども使って確認する。
デジタル改革関連法案も案文に誤りはなかったが、
手作業での確認が基本となる要綱と新旧対照表、
参照条文で誤りが見つかった。
ところがその後、産業競争力強化法と銀行法両改正案
の案文にもミスが見つかった。… 」
えっ、これで、終わり?
そうそう、法案がらみのハイライトシーンが、
たっぷりと詰まっていたでしょう。
物足りない方には、次の脚注が付きますよ。
(注1) 正確には、
〇 デジタル社会形成基本法案
〇 デジタル庁設置法案
〇 デジタル社会の形成を図るための関係法律
の整備に関する法律案
(注2) 「デジタル社会の形成を図るための
関係法律の整備に関する法律案」
は、次のとおり、裾野の広い法案です。
・ 法律案及び理由 369頁
・ 新旧対照表 637頁
・ 参照条文 309頁
(注3) 束ね法である
「デジタル社会の形成を図るための
関係法律の整備に関する法律案」
の具体的な内容(最初と最後だけ)は、次のとおり
〇 民法 (明治29年法律第89号) (第1条関係)
〇 抵当証券法 (昭和6年法律第15号) (第2条関係)
〇 死産の届出に関する規程 (昭和21年厚生省令第42号)
(第3条関係)
……
〇 公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための
厚生年金保険法等の一部を改正する法律
(平成25年法律第63号)(第59条関係)
〇 行政不服審査法(平成26年法律第68号)
(第60条関係)
〇 公認心理師法(平成27年法律第68号)
(第61条関係)
なお、束ね法については、【第1回】及び【第5回】で
紹介(詳解)しています。
(注4) 内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室では、
デジタル改革関連法案の外に、
〇 デジタル社会形成基本法案
〇 デジタル庁設置法案
の原案の作成及び取りまとめをしているので、
膨大な立案作業であったと想定されます。
3 記事の裏付けを取る
マスコミ関係の記者が記事を書くときは、
基本的に、現場取材などを通じて、
事実関係を基に記事を書きます。
ということは、読み手としては、
その事実関係の裏を取ることで、
記事を深堀りすることができます。
そこで今回は、
「法令ミス」関連の記事を取り上げて、
必要なリンクを貼ったり、
補足の説明を加えることにより、
法令のリアルな素顔に迫ってみました。
今宵は、これでおしまいです。
それではまた、近いうちにお会いしましょう。
