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【第4回】んっ、成立・公布・施行の時系列?

4 min

 法令の素顔をゆるりと愉しむブログ、
おきてのみやげ」の深夜不定期便を

お届けいたします。
 ナビゲーター(navigator)こと、

テラボ(terrabo)です。

 たとえ、門外漢(amateur)でも、
たやすく読めるはずの法律の条文を、
まさしく読めるようにしようとするのが、
このブログの密かな使命(mission)です。

 堅物(かたぶつ)でしかめっ面の条文には、
『北風と太陽』の二回戦目のように、
ゆるりとした心構えで取り組むのが得策
なときもあります。

 そこで今宵は、
んっ、成立・公布・施行の時系列?
のトピックで、英気を養いましょう。

 ざわめく講堂を背にして、
日中の緊張感をシャワーで流してから…

 それでは、開幕です。

1 法律ができるまでの大筋 

 まず、タイトルに登場する、3つの言葉について、
しれっと解説します。

(1) 成立と公布

 法律案は、原則として、
衆議院及び参議院の両院で可決したとき、
法律として成立します。

 法律が成立したとき、
後議院の議長から内閣を経由して奏上された日から

30日以内に公布(官報に掲載)されます。

 公布とは、
「成立した法律を一般に周知させる目的で、
 国民が知ることのできる状態に置くこと」です。
 法律を公布する際、暦年ごとの番号(法律番号
が付けられます。

(2) 施行 

 施行とは、
「法律の効力が一般的、現実的に発動し、作用すること」です。
 いつから施行されるかについては、通常、
その法律の附則で定められています。
 附則まで読まれる人は、相当こだわりのある方だと思います。

(3) 実にシンプルな流れ 

 法律の制定をめぐる大筋の流れを、シンプル化しますと、
次のように、ホップ(成立)、ステップ(公布)、ジャンプ(施行)
となります。

  1. STEP

      国会で成立

  2. STEP

      天皇が公布 ( → 法律番号が付与)

  3. STEP

      施行

 分かったような、分からないような…
そこで手っ取り早く、第1回と第3回に登場しました、
労働施策総合推進法を題材に、制定や改正の流れについて、
成立、公布、施行の文言を盛り込んでみましょう。

2 さっそく冒険に出かけましょう 

 例のごとく、
緑色は、対象となる法律の題名、
紫色は、改正する法律(改正法)の題名です。

(1) 労働施策総合推進法の船出 

 昭和41年6月27日、
雇用対策法」 (昭和41年法律第132号)
成立し、同年7月21日に公布されました。
 同法附則第1条により、原則として、
公布の日」から施行されました。

 たいていの方は、「附則」に馴染みが薄いと思いますので、
同法附則第1条(施行期日)を抜粋してみましょう。

(参照条文)
〇 雇用対策法
   附 則 
施行期日
第1条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、
 第21条の規定は、公布の日から起算して6月を
 経過した日から施行する。

 確かに、読んでいて心躍(おど)るものではありませんが、
学ぶことは愉しいですね~
 すぐにブログを移すのは良くありませんよ~

(2) 働き方改革関連法で名称が変わる 

 その後、平成30年6月29日、
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律
 (平成30年法律第71号)
成立し、同年7月6日に公布されました。
 同法第3条により、
雇用対策法の一部改正
が行われ、題名が、
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び
 職業生活の充実等に関する法律

 (昭和47年法律第113号)
となりました。

 働き方改革関連法(略称)の附則第1条第1号により、
公布の日」から施行されました。

(参照条文)
〇 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律
   附 則 
施行期日
第1条 この法律は、平成31年4月1日から施行する。
 ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から
 施行する。
 一 第3条の規定並びに…(略)…附則第30条の規定 公布の日
 (第2号及び第3号 略)

 上記の「(略)」では、読者の皆さんのフィーリングを察して、
十行以上を省略しています。
 黙って、ブログを閉じようとした方、
大切なのは、「折れない心」ですよ~ 

(3) パワーハラスメント防止法に変身 

 続く、令和元年5月29日、
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
 等の一部を改正する法律

 (令和元年法律第24号)
成立し、同年6月5日に公布されました。
 同法第3条により、
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定
 及び職業生活の充実等に関する法律の一部改正

が行われ、それにより、
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定
 及び職業生活の充実等に関する法律

に、第30条の2 (雇用管理上の措置等)が新設されました。

 このパワーハラスメント防止に関する規定については、
改正女性活躍推進法(略称)の附則第1条
各号列記以外の部分により、
公布の日から起算して一年を超えない
 範囲内において政令で定める日

(令和2年6月1日)から施行されました。

(参照条文)
〇 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
 等の一部を改正する法律 

   附 則 
施行期日
第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない
 範囲内において政令で定める日
から施行する。ただし、
 次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から
 施行する。
 一 第3条中労働施策の総合的な推進並びに
  労働者の雇用の安定及び職業生活の充実
  に関する法律第4条の改正規定並びに
  次条及び附則第6条の規定 公布の日
 二 第2条の規定 公布の日から起算して3年を
  超えない範囲内において政令で定める日

(注1) 「 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
    等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令

    (令和元年政令第174号)

(注2) 上記附則第1条第1号の
    「第3条中労働施策の総合的な推進並びに
     労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等
     に関する法律第4条の改正規定」
    とは、国の施策へのハラスメント対策の明記を指します。

3 附則がカギ

 上記2(1)~(3)までをサーっと読んでみますと、
成立公布は、それぞれの日付を明記すれば足り、
成立は、国会の後議院本会議で可決したという事実に、
公布は、官報に掲載されたという事実
基づくため、法律上に規定されているわけではありません。


 一方、
施行は、法律の終盤に規定される附則に、
「(施行期日)」として規定されていました。
 ですから、施行を調べようとしますと、
施行 ⇒ (施行期日) ⇒ 附則第1条
のように、(改正)法律の素顔にたどり着きます。

 そして、施行期日を含む附則の全体を眺めますと、
それぞれの条項が、まるでプログラミング言語のように、
機械的に羅列しているように感じます。

 法律案の企画・立案を担当する者の間では、
「附則を制するものは、法律を制する。」
と、ささやかれるだけのことはあります。
今回は、附則の玄関口に差しかかったところで、
筆を置きましょう。

 今宵は、これで閉幕です。
 それではまた、
近いうちにお会いしましょう。

 

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