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【第10回】んっ、法律番号は草分け?

4 min

 法令の素顔をゆるりと愉しむブログ、
おきてのみやげ」の深夜不定期便を

お届けいたします。
 ナビゲーターを務めます、

テラボ(terrabo)です。

 たとえ、門外漢(amateur)でも、
たやすく読めるはずの法律の条文を、
まさしく読めるようにしようとするのが、
このブログの密かな使命(mission)です。

 堅物(かたぶつ)でしかめっ面の条文には、
『北風と太陽』の二回戦目のように、
ゆるりとした心構えで取り組むのが得策

なときもあります。

 今宵は、「んっ、」で始まる
第1シーズンの最終話として、
んっ、法律番号は草分け?
のトピックで、ゆったりと
くつろぎましょう。

  話の素材として、パッと思いついたのは、
「男女雇用機会均等法」(略称)でしたが、
もう、【第1回】「題名」の2(3)で扱いましたので、
いろいろな法令の素顔を愉しんでもらうため、
「育児・介護休業法」(略称)の新登場です。

 いつものように、題名が変わるという
ハイライトシーンだけを切り取って、
サクサクと読み飛ばしていきましょう。
 それでは、はじまり、はじまり…

1 法律の場合

(1) 育児・介護休業法の例

 平成3年5月8日、
育児休業等に関する法律
 (平成3年法律第76号
が成立し、同月15日に公布されました。

     ⇓ 
 平成7年6月5日、
育児休業等に関する法律の一部を改正する法律
 (平成7年法律第107号
が成立し、同月9日に公布されました。
 同法第1条により、
育児休業等に関する法律の一部改正
が行われ、その題名が、
育児休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉
 に関する法律
」(平成3年法律第76号)
となりました。
     ⇓ 
 また、同じ法律の、
育児休業等に関する法律の一部を改正する法律
 (平成7年法律第107号)第2条により、
育児休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉
 に関する法律の一部改正

が行われ、先の題名がさらに、
育児休業、介護休業等育児又は家族介護
 を行う労働者の福祉に関する法律

 (平成3年法律第76号)
となりました。

 もうお馴染みの二段ロケット方式ですね。
そして現在も、この題名のままです。
 なお、あとがきとなりましたが、
育児・介護休業法の制定当初から
直近の改正に至るまで、
閣法として行われています。

(2) 題名は改められたが、法律番号はそのまま

 上記(1)で、育児・介護休業法(略称)の題名は、
次のように3つ登場しました。

育児休業等に関する法律
 (平成3年法律第76号
育児休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
 (平成3年法律第76号
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
 (平成3年法律第76号

 こう見てみると、「育児・介護休業法」という略称は、
ホント、便利ですよね。
 一瞥してお分かりのように、
題名は所々改められていますが、
平成3年法律第76号」という法律番号は
そのままです。

(3) 器用な法律番号

 法律番号を生年月日と考えますと、
子どもが成長して呼び名が変わっても、
同一人物には変わりありません。

 しかも法律番号は、生年月日と違って、
ひとつとして同じものがありません。
 ですから、法律を特定する際の有効な手段
の一つとなります。


 一方、法律番号が同じであっても、
その時々に題名が異なることがあります。
それが玉にキズですね。
 そのようなときに役立つのが、「略称」です。

(4) 題名を的確に表現するには…

 ただ、略称でなく、正確に題名を示したいときも
ありますので、そういうときは、
△△に関する法律(固有の法律番号)についての
 △△に関する法律等の一部を改正する法律
 (別の法律番号)〔改正の仕方は様々です。〕
 第▢条による改正後改正前)の題名」
と摘示すれば、同じ法律番号であっても、
その時々の題名を特定することができます。

「あぁ~、なんて整然とした小宇宙だろう。」
と、ささやかれた人は、殊勝な心がけの方です。
 一方、
「ありゃ~、面倒クサ~、やってらんねぇ~」
と思われた人は、きっと気移りのする方ですね。
 ちょっとした知見やスキルの差こそ、
違いが分かる大人の武器ですよ。

2 法令(法律以外)の場合

 「法律が公布される際に、法律番号が付けられる。」
という仕組み、実は、官報で公布される、
法律より下位の命令にも当てはまります。

(1)政令と省令

 政令でしたら、例えば、ちょっと毛色が変わりますが、
防衛省の職員の育児休業等に関する政令
 (平成4年政令第72号)
があります。
 法律の施行期日を定める政令は、随所に見られます。


 府省令でしたら、例えば、
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う
 労働者の福祉に関する法律施行規則

 (平成3年労働省令第25号)
があります。
 省庁再編前ですので、昔の名称で登場しています。

 このような、法律に係る委任省令又は実施省令は、
至る所に現れます。

(2)実施命令と委任命令

 豆知識ですが、実務上、
〇 法律を実施し、又は施行するために必要な
 政令、内閣府令及び省令
を「実施命令」と、
〇 個別の法律による特別の委任に基づく
 政令、内閣府令及び省令
を「委任命令」と
呼ぶことがあります。


 続けて、告示でしたら、例えば、
子の養育又は家族の介護を行い、又は行う
 こととなる労働者の職業生活と家庭生活
 との両立が図られるようにするために
 事業主が講ずべき措置に関する指針

 (平成21年厚生労働省告示第509号)
があります。
 こちらは、省庁再編後の現行の名称で登場しています。

3 通達番号や文書番号

(1) 通達

 実は、府省庁や地方公共団体が発出する通達に係る
通達番号も、法律番号の系(corollary)です。

 通達は行政内部の通知ですので、
官報に掲載して公布するわけではありませんが、
情報公開が進みつつある現在、
探したい通達が検索しやすくなりました。

 通達でしたら、例えば、
令和元年12月27日付け雇均発1227第2号
「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う

 労働者の福祉に関する法律の施行について」
 の一部改正について
を取り上げてみましょう。


 これは、令和元年12月27日付けで、
厚生労働省雇用環境・均等局長が、
(都道府県労働局あてに、)
1227第2号として発出した通達
という意味となります。

(2) 企業

 企業によっては、その文書に文書番号を
付けるときがありますが、その付け方は、
企業独特の方法で差し支えありません。

 例えば、「営業1-10」でしたら、
営業第1部長が発出した10番目の文書、
「総・人3.5」でしたら、
総務部人事課長が発出したカテゴリー3の5番目の文書
という整理の仕方もあり得ます。
 通常は、発出した年月日と併せて、

文書番号になります。

4 文書の管理か、それとも…

 官公庁であれ、企業であれ、
文書番号では、基本的に、年月日と数字を用いて、
文書のカテゴリーや順序を示すことができます。

 ですから、文書番号は、
あふれる文書群の中から、特定の文書を、
いち早く探し出したり、処分するときに

役立ちます。

 そういえば、かなり小さかった頃、
祖父らから聞いた話を思い出しました。

 先の大戦の当時、
作戦本部から遠方の前線あてに、
多種多様な指示・連絡文書が発出されるらしい

のですが、宛先は戦地、かつ戦時ですから、
今日の宅急便のように、日時・時間指定で
届くわけでもありません。
 作戦本部が近接した時期に発出した

指示・連絡文書が、1か月程ずれて
前線に到着する(届かない)ことも、
珍しくなかったそうです。
 そうなると、どの指示・連絡文書が直近なのか、
どういう立場から発出されたものなのかが、
最重要になります。そうしたとき、
文書番号が決め手になったとのことでした。

 平時には、文書の右上に、ちょこんと正座している
文書番号ですが、いったん、有事や緊急事態ともなれば、
人々の生死を分ける標識に変身するのかも知れません。

 懐かしい思い出に浸ったところで、
今宵は、おしまいにしましょう。
 これを以て、
第1シーズン〔第1回~第10回〕を
終えることができました。
 次回からの第2シーズンを乞うご期待!
(されても困るなぁ)

 

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