法律の素顔をゆるりと愉しむブログです

【Exercise1】障害者が働く

4 min

 ホイ来た、「おきてのみやげ」番外編、
早朝Exerciseの登場です。
 ということで、この度、装いも新たに、
法令のExercise(実地訓練)のコーナー

を設けました。 

 習えば、すぐやってみたくなる、
そのワクワク感こそが、Exerciseの源流です。
 もっとも、装いが新しいだけで、
内容に斬新さはありません。

 きょう一日のスタートアップ、今朝の
メニューは、「障害者が働く」と題して、
「障害者に係る雇用の促進及び就労の支援」
にピントを合わせます。
 物々しく聞こえますが、コンテンツは至って

明快です。


 第1回~第3回で培(つちか)った、
法令の素顔をゆるりと愉しむコツを大胆に活用し
アドホック(その場の思いつき)に対象を取り上げて、
法律の制定・改正の流れをサラッと眺めてみましょう。

1 雇用の促進

 まず、障害者の雇用の促進に関する法律として、
「障害者雇用促進法」(これは略称)から始めましょう。


 相も変わらず、法律改正の中身を省いていますので、
ジェットコースターのように歳月が進みます。

(1)障害者雇用促進法 

 昭和35年7月15日、
身体障害者雇用促進法」(昭和35年法律第123号
が成立しました。

    
 その後、昭和51年5月20日、
身体障害者雇用促進法及び中高年齢者等の雇用の促進
 に関する特別措置法の一部を改正する法律

 (昭和51年法律第36号)が、
昭和55年11月28日、
身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律」 
 (昭和55年法律第110号)が、
昭和59年6月21日、
身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律
 (昭和59年法律第50号
が成立します。
 改正する法律の題名が同じだと、味気ないですね。

   ⇓ 
 その後、昭和62年5月22日、
身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律
 (昭和62年法律第41号
が成立し、題名が、
障害者の雇用の促進等に関する法律
 (昭和35年法律第123号)
となりました。


 現在も、この題名のままで、法律番号も同じです。
 この後の改正法の題名は、もう見ていられません。

   ⇓ 
 平成4年5月26日、
障害者の雇用の促進等に関する法律
 の一部を改正する法律

 (平成4年法律第68号)が、
平成6年6月14日、
障害者の雇用の促進等に関する法律
 の一部を改正する法律

 (平成6法律第38号)が、
平成9年4月3日、
障害者の雇用の促進等に関する法律
 の一部を改正する法律

 (平成9年法律第32号)が、
平成14年4月24日、
障害者の雇用の促進等に関する法律
 の一部を改正する法律

 (平成14年法律第35号)が、
平成17年6月29日、
障害者の雇用の促進等に関する法律
 の一部を改正する法律

 (平成17年法律第81号)が、
平成20年12月19日、
障害者の雇用の促進等に関する法律
 の一部を改正する法律

 (平成20年法律第96号)が、
平成25年6月13日、
障害者の雇用の促進等に関する法律
 の一部を改正する法律

 (平成25年法律第46号)が、
令和元年6月7日、
障害者の雇用の促進等に関する法律
 の一部を改正する法律

 (令和元年法律第36号
が成立しました。

 忍耐を通り越して、足元がふらついてきます。
 いま、ブログを移ろうとしたあなた、
まず深呼吸をしましょう。
 許し合う心、寛容の精神が大切です! 

(2)しんぼう(題名)から工夫(略称)へ 

 とはいえ、同じ題名がこれほど単調に続くと、
それぞれの改正の要点が、さっぱり頭に入ってこないものです。


 昭和62年改正では、題名それ自体が改められているので、
そこを分岐点に、前後の対比を印象づけることができますが、
その後は、改正法の題名が変わり映えしません。

 そういうときには、例えば、
平成4年〔第4次〕改正平成6年〔第5次〕改正
 平成9年〔第6次〕改正平成14年〔第7次〕改正
 平成17年〔第8次〕改正平成20年〔第9次〕改正
 平成25年〔第10次〕改正令和元年〔第11次〕改正
と、主な改正を〔第〇次〕のように順序付けにすれば、
整理しやすくなります。

 また、改正項目をマトリックス(マス目)にして、
ビジュアルに図式化すれば、
中身の移り変わりが把握しやすくなります。しないけど。

 さて、法律改正の中身が登場しない、
法令の素顔に慣れましたでしょうか。
「中身がないなら、題名を改める場合だけを
 ピックアップしたらええのに。」
 そういう噂も聞こえて来そうですが…

 それでは、この調子で、exerciseを続けましょう。

2 就労の支援 

 次は、障害福祉サービスとしての「就労の支援」です。

(1)障害者保健福祉施策の主な法律

 堅苦しいスタートで申し訳ありませんが、
障害者保健福祉施策に係る主な法律としては、
次のようなものがあります。

身体障害者福祉法」(昭和24年法律第283号)
知的障害者福祉法」(昭和35年法律第37号)
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(昭和25年法律第123号)
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号)
があります。

 これらのうち、ここでは、
就労系障害福祉サービスとしての、
就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)
及び就労定着支援を定めている
「障害者総合支援法」(これも略称)
を取り上げましょう。

(2)障害者総合支援法 

 始まりは、平成17年10月31日、
障害者自立支援法」(平成17年法律第123号)
が成立しました。
   ⇓ 

 平成23年4月28日、
地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」〔第1次地方分権一括法〕(平成23年法律第37号)
が成立し、同法第19条により、
障害者自立支援法の一部改正
が行われました。

   ⇓ 
 また、平成23年8月26日、
地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」〔第2次地方分権一括法〕(平成23年法律第105号)
が成立し、同法第54条により、
障害者自立支援法の一部改正
が行われました。

 2つの地方分権一括法(第1次及び第2次)の題名が、
全く同じですので、
法律の素顔(付け足しの解説を加えない)ならば、
両社を、法律番号で区別することになります。

   ⇓ 
 その後、平成24年6月20日、
地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」(平成24年法律第51号)
が成立し、同法第1条により、題名が、
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号)
となりました。現在、この題名のままです。


 障害者総合支援法のケースでは、
束ね法による改正が多く、改正法の題名からだけでは、
障害者総合支援法が改正されたのか、
判別しにくくなっています。

3 法令の素顔を知るための小道具 

 ここまで、
「障害者に係る雇用の促進及び就労の支援」
を対象として、
一本調子な改正を繰り返す「障害者雇用促進法」、
束ね法による改正が多い「障害者総合支援法」
の制定・改正をサラッと眺めてみました。

 既にお気づきのとおり、
題名、略称などの小道具を使いこなすだけで、
面白いように、法令の誕生・成長の流れが
早わかりできます。

 実は、法律(の改正)が小難しく感じるのは、
お化粧した解説書だけを読んでいたから、かも知れません。
 法学部でさえ、法令の素顔を知るための小道具に、
なかなかお目にかかれないのですから…

 exerciseのコーナーでは、紹介した小道具をフル活用して、
様々な法令の誕生・成長を実写していきたいと思います。

4 法律上の言葉遣い  

 末尾となりましたが、本ブログでは、
「障害者」という言葉を使っています。
 これは、法律の題名に、「障害者」の文言が
用いられていることによります。

 【第1回】2(3)の「男女雇用機会均等法」の例で、
制定時の「婦人」という文言が、その後の改正により、
 「婦人」⇒「女子」⇒「女性
と移り変わったのを、覚えていますでしょうか。

 これを、法律上の「障害者」の用語に当てはめますと、
多数の法律において「障害者」を用いていますので、
仮に、「障害者」を別の用語に変更するのでしたら、
おそらくは、政府が提出する束ね法案により、
一括して改めるのではないかと推測されます。
 「法律の文言を変えるのは法律」ですね。
 

 今朝のExerciseは、これでおしまいです。
 それでは、また来週!(決まってないけど)

 

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